まわし論2

以前に分析した締め込み論。時代も動いたので、違う観点も加えて、改めて傾向を分析。

(平成29年1月)

 

現代の流行

4横綱の締め込み

 王者白鵬の茶色は横綱2年目から長期に渡っている。

横綱では曙が締めていたくらい(平成10年頃の低迷期)で、珍しい色だ。あやかって「鵬」がつく四股名は増えたが、茶色の回しにはフォロワーは現れず。孤高の存在だけに、恐れ多いか。体格の似ている隠岐の海が一時締めていた。色白によく似合う。

 大関時代には銀と併用していた日馬富士は、横綱昇進後は黒で固定。緑から青に変えていた鶴竜も、昇進後紺に固定。3横綱とも落ち着いた色で貫禄を示している。

 赤い(エビ茶?)まわしがトレードマークだった稀勢の里は、ここ2年ほど前に紺に変え、ついに綱取り成功。横綱としてもこれで行くのだろうか。鶴竜と被っているので、できれば独自色を期待したい。大関になる前は数場所だけ青を締めていたこともあったが、しっくり来なかったのか、程なくお蔵入りした。馴染みの赤は挑戦者というイメージがあり、最高位に在る者らしい濃い色味で言えば、あとは紫くらいか。だが、三重ノ海、旭富士、若乃花と短命のジンクスがある。

大関陣

 あまり色を変えない傾向だった4大関陣は、1年あまりで解散。29年3月は2大関となった。昇進した稀勢の里は前述のとおり。陥落してしまった琴奨菊は、5年余りの大関生活を青廻しで通した。昇進前からずっと青。現代では珍しい存在だ。豪栄道、照ノ富士は昇進後黒で通している。豪栄道はいままで紺に始まり銀鼠に薄水色までバリエーションがあったが、地位を得るとおしゃれがしにくくなるのか。

関脇以下

 横綱大関に比べて色を変える者が多い。成績の停滞などで気分転換に変えることもあれば、単純に消耗で変える場合もある。変えた途端に印象が変わったという例もあまり多くないが、近年では長らく平幕暮らしだった玉鷲がスカイブルーの鮮やかなまわしに変えて新三役。さらに直近では三役であわや連続二桁という躍進ぶりである。

 

黒系 豪栄道、照ノ富士、松鳳山、千代翔馬、千代の国、妙義龍、錦木、千代皇、臥牙丸、千代鳳、大砂嵐

緑系 隠岐の海、魁聖、石浦、大翔丸、佐田の海、千代大龍

紺系 鶴竜、稀勢の里、栃煌山、宝富士、勢

水色 髙安、玉鷲、琴勇輝、貴景勝

青系 琴奨菊、正代、碧山

赤系 御嶽海、遠藤、嘉風

紫系 豪風、北勝富士、蒼国来

銀・灰系 栃ノ心、荒鷲、貴ノ岩

茶系 白鵬

金・黄系 輝

 

 29年初場所に限って整理してみると、上記のように黒が最多。さらに2大関が加わる。

九重勢が千代大龍以外4人が黒い締め込み。昨年なくなった先代九重の千代の富士へのリスペクトであることは、言うまでもない。

 意外に人気があるのが緑。赤に戻したが、昨年は嘉風や正代も締めた。誰かがリードしたわけでもなさそうだが、2位となった。近年の横綱大関ではあまり見かけず、最晩年に復活した時の曙、それから雅山くらいか。緑と言っても色々あるが、みな渋めの深い緑である。

続く3位は紺で、2横綱と栃煌山ら実力者3人。栃煌山は紫から乗り換えたが、不振が深刻。宝富士は赤紫、勢いは黒も締めており、案外自分の色にしている力士がいない。白鵬、栃ノ心などもかつて締めており、所有者は多い。

 続くのも意外に水色。髙安のそれは水色というにはかなりの寒色であまり見かけない色。貴景勝もかなり明るくエメラルドに近い。玉鷲、琴勇輝はしっかりした色味の水色だ。一口に言ってもかなり幅がある。伸び盛りの若手が締めることの多い色。最近はあまり見かけない。

意外に少ないのは、青だ。わずか3人。かつての定番色がなぜここまで減ったのか。青=男の子の時代ではなくなったからかはわからないが、若者には映える色。復活を期待したい。

番外編は、桃色だ。十両を沸かせた小兵の宇良。桜をイメージした薄いピンクでの新十両は印象的だった。かつての男子なら赤面するような色あいだ。さらにこれに対抗したかは知らないが、地味なまわしで地味な相撲を取っていた英乃海が突然ピンクに転向、しかも宇良より鮮やかなショッキングピンクだ。賛否はともかくよく映える。昭和では赤紫まではあっても桃色までは到達しなかった。平成に入って琴ノ若、武蔵丸らが使用しているが、トレードマークにまでした力士はいない。

鮮やかな色は、ピンク以外では、黄緑、黄色に該当者がない。黄緑は平成初期の琴錦、三杉里ら一定数いたが、近年は少ない。

 全体的に、パステルカラーよりも落ち着いた色合いがトレンド。プロ野球のユニフォームでも、青系のチームが軒並み紺に近い色になっており、そういう流行なのかもしれない。各色のバランスが取れているのも特徴的である。この場所は黒が多くなっているが、長期間締め続ける力士は少なく、おそらく一時的なもの。

 

まわし 色の歴史

 かつては染色技術の問題もあり、規定どおり紺や紫、褐色の暗い色しかなかった。

 双葉山は何年も擦り切れた褐色の締め込みで通したという。

 栃若時代、柏鵬時代の前半くらいまで、まわしの色に関するエピソードは、昭和32年九州で玉乃海が平幕全勝優勝を飾った際に締めた黄金のまわしくらいだ。

 一気に色合いが多彩になったのはカラーテレビ放送が普及した昭和40年台半ばから。この頃は柏戸、北の富士、輪島など緑色のまわしが目立つ。昭和50年ごろには百花繚乱といった具合に派手な色が流行る。先導者は高見山か。オレンジの締め込みを巨体に食い込ませ、土俵の人気者となった。豊山の黄緑などパステルカラーが目立つ。そして横綱輪島が黄金の締め込みで君臨した。50年台後半には、北の湖を筆頭に上位陣は青が支配的に。北の湖、隆の里、琴風、北天佑、朝潮はずっと青で、千代の富士、若嶋津も青の時代があった。珍しい黒の締め込みで53連勝を記録した千代の富士全盛時代は、赤紫色も流行。

 平成に入ると、明るい色のまわしを締めた若手が次々登場し、若貴フィーバーが巻き起こる。曙・貴乃花が乱世を治め、少し落ち着いたが、金のまわしの系譜を水戸泉が引き継ぎ、朝乃若、闘牙といった面々が派手な色で目立った。横綱貴乃花は茄子紺のまわしで通したが、曙や大関陣は定期的に色を変えた。武蔵丸が歴代横綱では珍しい明るいスカイブルーの廻し、武双山は銀鼠と、それぞれに個性があった。

 朝青龍の時代になると、黒まわしの横綱を筆頭に上位はオーソドックスな色あいに。色で魅せる個性派も減り、やや面白みがなくなったが、横綱の影響か千代の富士以来の黒が復活し、現代では最多を誇る(九重勢によるところが大きいが)。白鵬は近年珍しい茶色で長く王座を極めた。この2横綱は共に1場所弱だけ黄金の締め込みを披露、サービス精神を見せた。

 時代を思い起こして当時の看板力士を思い浮かべるとき、イメージに自然と浮かんでくるのはまわしの色だ。時として、その色がその時代のイメージそのものになったりする(わかってもらえなければ結構)。だからこそ、横綱大関には完全に固定しろとは言わないが、核となるカラーは持ってもらいたい。例えば千代の富士であれば空色群青黒と横綱になってから3種を使用したが、ウルフフィーバーで駆け上がった時代、第一人者となった時代、30代で全盛を築いた円熟の時代と、それぞれ思い起こすことができる。必ずしも派手な色でインパクトを与えてもらう必要もない。差別化でき、かつ似合っていれば自然と個性的に映るだろう。ただ、どんなことでもいいので、せめて一人ひとつはまわしに関するエピソードを残してもらいたいと思う。

 

【参考】使い分け別分類

 

【一筋】琴奨菊、若の里、北の湖

【固定】白鵬、千代の富士、貴乃花、武蔵丸

【併用】日馬富士、宝富士、嘉風

【変遷】琴錦、高安

【多彩】曙、隠岐の海