優勝力士別分析

 この項では、平成の優勝回数上位5傑(優勝回数二桁)を対象に、優勝した場所の内容をファクター別に分析して、特徴を洗い出す。力士ごとに得意な展開、傾向が見えてくる。

1.力士別展開分布

  白鵬 朝青 貴花 武丸 合計
一騎打ち 10 5 4 2 2 40
逃げ切り 8 4 4 3 1 32
独走 7 3 5   2 22
突き放し 4 6 2 2 1 19
競り勝ち 1 1 3 3 2 16
抜け出し 3 2 1     12
三つ巴 1 1 1   1 12
混戦 2     1 2 11
大独走 4 2       7
追い込み 2 1 1     7
大混戦     1 1   3
合計 42 25 22 12 11 181

 展開を合計場所数の多い順に並べ、平成優勝回数上位5傑の回数を比較した。

 白鵬は「大混戦」以外のすべての展開で優勝しているが、目立つのは大独走の多さ。総計7場所のうち4場所を白鵬がマークした。前半の取りこぼしが少なく、独走、逃げ切りといった展開の割合が多い。

 朝青龍は、3でも目立っていたが「突き放し」が得意。終盤、何とか1、2差で追う大関陣を退けて優勝を決定的にした。「混戦」は1度もなかった。

 貴乃花の最多展開は「独走」。武蔵丸は「独走」がなく、先行しながらも縺れがちだったが、混戦には強かった。曙にはあまり得意パターンはなく、満遍なく優勝を果たしている。

2.力士別優勝成績

  白鵬 朝青 貴花 武丸 合計
15-0 15 5 4 1 0 30
14-1 18 9 10 1 3 72
13-2 8 11 7 6 7 63
12-3 1 0 1 3 1 14
11-4 0 0 0 1 0 2

 白鵬の全勝優勝15場所は圧倒的な記録。武蔵丸は大関時代初期の初V時だけで、曙は遂に全勝がなかった。対して通算優勝9回の日馬富士は3度も記録、豪栄道は唯一の優勝が全勝。

 曙、武蔵丸は13勝が最も多く、14勝以上は2割台、1割台とかなり少ない。対して、貴乃花、朝青龍、白鵬は14勝以上での優勝の割合が高かった。特に白鵬は14勝以上が8割近く。特に横綱1年目までは縺れた展開も多かったが、2年目以降は圧倒的な勝ち方がほとんど。追いかける展開で、粘って賜杯をものにすることは少なかった。14勝以上の優勝回数では、朝青龍と貴乃花はタイ。13勝での優勝の差で通算優勝回数では朝青龍が上回るが、貴乃花は2度14勝で優勝を逃しており、成績では遜色ない。

3.力士別 星の差

白鵬 朝青 貴花 武丸 合計
0 6 5 5 1 4 37
1 14 7 8 10 5 74
2 7 8 5 1 2 42
3 10 4 3 0 0 20
4 5 1 1 0 0 8

 優勝力士と次点の力士の最終的な星の差。0差は決定戦、1差は僅差、2差は快勝、3差は大勝、4差は圧勝といったところ。さすがに5差はついたことがなかった。全体では、1差、2差、同点の順。1差以内が6割超を数えるが、白鵬、朝青龍は2差以上が1差以内を上回る結果に。圧勝ぶりが伺える。

 武蔵丸は全勝したときでも1差で、優勝決定後に負けることも多く、12回中10回が1差。曙もほぼ接戦。

4.力士別 決定時

決定日 白鵬 朝青 貴花 武丸 合計
6 5 5 1 4 37
千・相 1 1 3 3 1 16
千・直 2 2 2 1 2 14
14 3 3 3 2 46
14・直 0 0 0 1 0 4
14 13 12 7 3 1 50
13 6 2 1 0 1 14

 やはりモンゴル2大横綱の優勝決定は早い。千秋楽を待たずに決めた割合が白鵬45%、朝青龍56%。貴乃花の36%も低くないが、さらにその上を行く。最もその率が低いのが曙で、18%。ほぼ千秋楽、それも4回は決定戦、うち2回は巴戦を制している。全盛期には圧倒的すぎて面白くないと言われたが、あくまで相撲内容の話であり、優勝争いは十分盛り上がった。

 決定の早さと優勝成績・後続との差はほぼ比例関係にあるが、武蔵丸は例外。好成績や大差は少ないのに、12回中4回と33%は楽日前に優勝を決めている。これは優勝決定後の千秋楽をことごとく落としていたから。初優勝は全勝ながら千秋楽結びの決定だったが、全体では真逆の傾向を呈した。

 

※決は決定戦。千・相は千秋楽相星決戦。千・直は千秋楽の1差直接対決で決定。千はその他千秋楽の決定。14直は、14日目1差直接対決で決定。14はその他14日目の決定。