昭和相撲史発掘 本場所編

昭和39年9月場所

概要

トピックス

 休場あけ大鵬 不死鳥伝説のはじまり

 

優勝

 大鵬

 横綱

 14勝1敗

 千秋楽本割

 

記録

 出羽錦 幕内在位77場所に伸ばし引退

 

歴史的観点

 大関陣を退けた大鵬、復権し東京五輪へ

 佐田の山 綱取りへの布石

 大関陣健闘、またも故障の柏戸、早々脱落の栃ノ海には不安

 

お約束・名物

 おなじみの個性派行司たち

 戦後相撲界の生き字引 出羽錦最後の勇姿

 明武谷、若浪の驚異的な吊り.うっちゃり

 

前場所からの流れ

 休場明けとなる大鵬、柏戸がどこまで復調しているか。先場所後半意地を見せた栃ノ海や、面目を示した大関陣が復帰した柏鵬にどこまで迫るか。13勝した豊山が今度こそ初優勝を果たせば、或いは横綱の声が掛かるか。

 柏鵬時代の今後を左右するターニングポイントだ。

 

この場所の成果

 いきなり荒れた先場所と異なり3横綱は静かな立ち上がりだったが、平幕豊國が4日目から柏鵬を連破。柏戸はまた負傷休場となった。栃ノ海も4日目から岩風、若浪に連敗。序盤金星の3人だが、いずれも最終的に二桁黒星を喫しており、横綱陣の調子がまだ上がっていなかったことを物語る。

 

 先場所に続いて大関陣は終盤まで優勝争いに残る活躍を見せた。名古屋の13勝で自信を取り戻したか、豊山は7連勝。前田川に土をつけられたが、1敗で上位戦を迎えた。北葉山は序盤2敗も中盤無傷、栃光も2敗でまとめて終盤へ。一時トップに立ったのが先場所大関で唯一一桁に終わった佐田の山で、初日から9戦全勝。ところが、上位陣の先鋒として大鵬へ挑む前日、清國に土をつけられた。大鵬とは水入りの熱戦を演じたが敗退。終盤猛追し13勝したが、及ばず。他の3大関も可能性がある中で挑んだが、いずれも返り討ちにあった。

 

 好位につけ、直接対決で4大関を振るい落した大鵬。盤石のレース運びで、初の休場明けの場所を制した。幾多の怪我に悩まされ、進退を噂される度に鮮やかに復活し、「不死鳥」と呼ばれた大横綱。この場所がその端緒である。大関陣の健闘ぶりが、より大横綱の高みを際立たせた。

 場所後の10月には東京五輪が開催。王者の面目を保って祭典を迎えることができた。 

 

 関脇北の富士、清國、若見山ら期待の若手は活躍ならず。

 

 若羽黒は中位に戻って勝ち越し。一時は十両落ちの危機だったが番付編成に救われて延命に成功したが、下4枚で6勝9敗と残るはず星の出羽錦が場所後に引退した。39歳。初代三賞受賞者。数々の連続在位記録を残し、佐田の山の手数入りで太刀持ちという夢は後進に託して土俵を去る。

 

 十両上位は好成績者が多く、筆頭で優勝の義ノ花が新入幕を、琴櫻荒波が再入幕を決定的にしたが、出羽錦が幕内の座を譲っても、3枚目11勝の長谷川は上がれなかったのは、幕内下位の「残留力」によるもの。

 

 

三賞

 殊勲 開隆山  栃ノ海に3敗目、栃光に2敗目をつけて9勝。殊勲?

 敢闘 明武谷  筆頭で8番、2大関破って三役復帰。

 技能 前田川  出足が冴えて、豊山に土つけた。

 

 三賞受賞者は誰も二桁に届かず、今日的な基準では箸にも棒にも掛からなかっただろう。下手をすれば該当なし。

 各賞1人の時代、それゆえの不運もあれば、こういうラッキーもある。とはいえ、11勝の35歳鶴ヶ嶺に機械的に技能賞が行ったわけでもない。内容を吟味しての選考だろう。初の上位戦で北葉山を破って勝ち越した玉乃島も選外だった。